どうかこれが、優しすぎる幻影でありますよう。
どうかこれが、偽りのない真実でありますよう。
まひるのつき
生きて欲しいと、最期に君は云いました。
いつも傍にいるからと、小さく微笑みました。
けれど僕は、ずっと独りで過ごしています。
君の姿を、どこにも見つけられないのです。
太陽の輝く空に、白い月が透けていました。
昼のなかに、かすかに夜が混じっています。
それは、絶対にあるはずのないことなのです。
逝ってしまった君が、どうしてかここにいます。
泣き濡れた僕の頬を、爽やかな風が乾かします。
草花が薫って、こわばっていた肩がゆるみます。
降り注ぐ陽射しが、凍っていた心を暖めます。
すべて、うんと昔に君がしてくれたことばかりです。
もう、触れることも抱きしめることもできません。
どんなに伝えたくとも、この想いは届かないのです。
それでも君は、この世界に確かに棲んでいます。
僕はようやく、そのことに気付いたのです。
真昼の月が、静かに浮かんでいます。
大切なひとが、そっと佇んでいます。
苦しいこともつらいことも、何ひとつありません。
だから僕は、真っ直ぐに立ちつづけるのです。