できるかぎり、ううんずっとずっとずうっと、いっしょにいられたらいい、な。

















only*only














冬になると、あっちこっちの感覚が痛いくらいに研ぎ澄まされて鋭くなる。
なのに嗅覚だけは例外で、どんなに吸い込んでみてもよく判らない。
外気で粘膜が凍っちゃうのか、はたまたそうならないための防護なのかも。
ともかく、匂いがわからないって、とても、たまらなく、悔しいことだと思う。
だって、雨には独特の匂いがあって、雪は雨が結晶になったもの、でしょ。
そのくせ匂いがしないから、気配や前触れを探り当てるのはすごく難しい。
だからさっき、隣に並んだ肩が白く濡れるまで、ちっとも気付かなかった。
降り始めたのは、きめが粗くて粒が大きな、軽くてやわいぼたん雪。















「これって初雪?」
「…多分」















興奮気味のあたしとは違って、返ってきたのは興味なさげな短い答え。
いつものことだから気にせずに、あたしは上を向いて大きく口を開けた。
首元やほほにかかる髪が、体温で少し生ぬるくなっているのがわかる。















「いきなり何を」
「おまじないよ」
「…どういう?」
「うん、あのね」















もやもやと広がり、散ってゆくだろう言葉を、ひどく慎重に選んだ。
銀ねず色に垂れ込める空、浮かぶのは白くあまい、小さなひかり。
凛としたものがほのかに揺れながらあたしを満たして、そう、音もなく。















「初雪を食べると願いがかなうんだって」
「本当に?」
「…さあ」
「判んなくてやってんのかよ」















雪の粒がちょんと舌におちてきて、ただなんとなく、むずがゆい感触。
別にね、そんなことで本当に願いが叶うなんて信じてるわけじゃなくて。
大切にしたいものを確かめる、儀式みたいなものって、そんな感じかな。















「そんで、一体何を祈ったわけ」
「まあ色々…」
「答えになってねーし」
「じゃあ秘密」
「お前ってつくづくそういう奴だよなー」















睫毛の生え際のさらに内側、淡い紅色の粘膜が固くひきつれる。
靴の中、つま先がしびれて、心臓と共鳴しながら鼓動を刻んで。
吐く息はやけに湿っぽいくせに、口の中がかさかさするのが不思議。















「ずっと…」
「ん?」
「やっぱり何でもない」
「言いかけて止めんな。こっちが気になる」
「だあめ、教えてやんない」
「…にやにやしやがって、締まりのない」
「余計なお世話」















他の誰でもない、たった一人に必要とされれば、あとはなんにもいらない。
内緒にしている願いごとも、あたしはいつまでも、いつだって、忘れないよ。
それぞれは取るに足らなくても、積み重ねればいつかは形になるはずだし。















 「ほれ、手ぇ貸せ」
 「珍しー。どういう風の吹き回し?」
 「気紛れだよき・ま・ぐ・れ。たまにはいーだろ?」
 「ふうん」
 「不満でも?」
 「嬉しいな、と思って」
 「――っし、寒いからいっちょ走るぞ!」
 「ええ!?ちょ、待っ…きゃあ!」